“チェコ・リポート”とがん検診は早く死ぬ
岡田正彦教授(新潟大学医学部)。彼は医療統計学の権威であり、「がん検診の大罪」という著書を出している。・・・岡田教授によると、がん検診有害論は、すでに20年前に発表されている。
それが、1990年、チェコスロバキア(当時)の研究報告で“チェコ・リポート”と呼ばれている。検証されたのは肺がん検診である。肺がん検診の方式は各国共通している。
胸部レントゲン撮影と痰検査である。当時、肺がん検査の有効性を確認するための大掛かりな調査が行われた。具体的方法は以下のとおり。・・・「・・・結果は驚くべきものだった。」岡田教授は次のように証言する。
「普通に考えれば、きちんと検査を受けてきたAグループの方が、そうでないBグループより肺がんになる割合も、死亡率も少なくなるはずです。ところが、結果は逆でした。検診を受けていたAグループの方が(Bグループに比べ)多く肺がんになり、より多く肺がんで死んでいたのです。」
“チェコ・リポート”の衝撃はそれだけではない。この調査では、肺がん以外にあらゆる死亡原因データが集められた。ところが、肺がん以外の病気で死亡した人も、を受けたAグループの方が明らかに増えていた。
①「がん死亡率」に加えて、②「総死亡率」も高くなっていた。・・・このころ、アメリカとフランスで同様の実験が行われ、同様の結果が出ているのだ。
・・・では、なぜ検診で、肺がんや総死亡が増えたのか?これらの調査に携わった研究者たちは、理由として三つの可能性を上げている。
①繰り返し行われたレントゲン検査(X線被爆)により新たなガンが発生した。
②放置してもかまわないガンが多かったのかもしれない。~余計な治療で死なせた!
③必要のない手術を受けたことで体の抵抗力が落ちて、他の病気が増えた。
・・・CTスキャンとは「コンピューター断層撮影法」の英文略称。X線撮影とコンピューターを連動させたもの。そのX線被爆量は、単純レントゲン撮影の数100倍ともいわれる。
その分、発がん性も数100倍になる。・・・「世界中でレントゲン撮影が最もたくさん行われているのは、間違いなく日本である。CTの設備台数も世界一であり、マタイのバリウム撮影の件数も(正確な統計はないが)桁違いに多いのではないかと考えられる。」(岡田教授)・・・
岡田教授は、様々なデータから次のように試算している。「レントゲン検査を原因とする肺がんの潜伏期間は1~3年と極めて短いものである。たばこによる肺がんの潜伏期間がおよそ25年であったことに比べれば格段の差で、遠い将来では済まされない深刻な問題となってくる。」・・・胃がん検診は、つまり肺がん検診の100倍危険といってもよい。また、大腸がんの検査リスクはさらに、その3倍という。
・・・欧米の大規模研究で肺がん検診は、①肺がん発生率、②総死亡率を急増させることが実証された。
しかし、不思議なことに、これらの研究報告を日本政府は完全無視。
ガン学会も黙殺している。マスメディアもなぜか一切報道しなかった。
政府、学界、マスコミは国民ががん検診の真実に気づくことを極度に恐れたのだ。
だから、一切の情報を封印した。それどころか、
日本では欧米とは全く逆の流れが起きていた。チェコ・リポートから約10年。
突如、厚生省研究費による「がん検診の有効性調査」がスタートした。そして、きわめて不可解なことに、こちらの研究結果は大々的にマスメディアは報道した。
欧米リポートは黙殺。国産リポートは絶賛。その報道は、次のように唖然とするものだった。
「肺がん検診を受けると、肺がんによる死亡率は半減します。」この厚生省ぐるみのマスコミ発表を「週刊現代」(前出)は「日本人だけが信じる嘘」と断罪している。・・・岡田教授もあきれ果てる。
「肺がんで死亡した人が、過去3年間に検診を受けていたかどうか、を調べただけの不完全なものです。そもそも調査の目的が『肺がん検診の有効性を証明する』ものだったのです。毎年の肺がん検診で死亡率が半分になる、というのは明らかな嘘です。」
環境評論家 船瀬俊介談